品質の悪い燃料を使っていると、エンジンやボイラーといった燃焼機関にさまざまなトラブルが発生し、稼働率の低下や事故などを招きます。「燃料にどのようなものがあるのか」「その品質を決めるのはなんなのか」といった点をしっかり理解したうえで、燃料の安全性・品質をチェックするために分析業者を利用しましょう。
炭素量 | 種類 | 概要 |
---|---|---|
無煙炭 (むえんたん) |
炭素含有量90%以上。煙が少なく希少だが、揮発分が低く、着火しにくい。焼結に使用可能な低燐のものは原料炭(製鉄用のコークス、都市ガスや化学原料用ガスなどを製造するための石炭)の一種として高価格で取引される。 | |
瀝青炭 (れきせいたん) |
炭素含有量83~90%。粘結性が高いものはコークスの原料として、石炭の中でももっとも高値で取引される。粘結性の低いものは、亜歴青炭とともにボイラーの燃料として用いられる。 | |
亜瀝青炭 (あれきせいたん) |
炭素含有量78~83%。瀝青炭に似た性質を持つが、水分を15%以上含む。基本的に粘結性がほとんどなく、コークス原料には使えない。しかし火付きが良く、熱量も無煙炭・瀝青炭に次いで高いため、電力用・産業用ボイラーにおいて高い需要がある。 | |
褐炭 (かったん) |
炭素含有量70~78%。石炭化度は低く、水分・酸素の多い低品位な石炭。発熱量が低いので、高い熱量を出すには大量に消費せねばならず、輸送コストがかさむ。また、脱水すると自然発火しやすくなるため、工業用としてはやや扱いにくい。おもに一般家庭などで「練炭」「豆炭」として使用される。 | |
泥炭(でいたん) | 「ピート」とも呼ばれる泥状の炭。不純物が多く水分も多く含むため、工業用燃料としての需要は低い。スコッチ・ウイスキーの製造過程において、麦芽の成長をとめるために乾燥させる際の燃料として香り付けを兼ねて使用される。また、園芸で土を肥やすために使用されることもある。 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
石炭は、水分が多いと「発熱量が低い」「着火しにくい」という性質になります。また灰分も発熱量を下げる原因になり、燃焼後には廃棄物として残存してしまうので、少ないほうが望ましいとされています。瀝青炭(れきせいたん)と亜瀝青炭(あれきせいたん)は水分・灰分が比較的少なめで、日本においてよく使用されています。
輸入の際には、まずうたわれている区分通りの炭素含有率であるかの確認が必要ですが、仮に同じ区分であっても、品質には差があります。とくに瀝青炭は、粘結性が高くコークスに使える「高度瀝青炭」と、粘結性が低くボイラー燃料としてしか使えない「低度瀝青炭」があり、品質に大きな違いがあるため注意が必要です。
粘結性だけでなく水分や発火性や発熱量をトータルで確認して、「品質のよい石炭か否か」を判別することが可能です。そのほかにも品質を分ける要素はいくつかあり、当センターではそれぞれを個別に分析可能です。
低品質な石炭は熱効率が低いため大量消費が必要となり、コストがかさむだけでなく、燃焼時に排出される物質によって環境汚染を引き起こすリスクもはらんでいます。また、要求品質に満たない石炭を利用するとボイラーの故障原因になる可能性があるため、注意が必要です。たとえば「灰融点」の低い石炭は、ボイラー火炉内で溶融した灰が幅射伝熱面に付着し、冷却されて固化堆積してしまいます。これは効率低下や故障などの原因となるものです。
原油によって精製される燃料は軽油、ガソリン、灯油、重油、ジェット燃料など多くの種類があり、品質の基準もそれぞれ異なります。当センターで行っている分析は、日本工業規格(JIS)準拠です。JIS規格に適合しているか否かは、発熱量、水分、密度、引火点など多様な項目をチェックすることで判断できます。
資源エネルギー庁では、揮発油、軽油、灯油、重油について以下の品質規格を定めています。
項目 | 満たすべき基準 | 分類 |
---|---|---|
鉛 | 検出されない | 環境(大気汚染防止) |
硫黄分 | 0.001質量%以下 | 環境(大気汚染防止) |
MTBE | 7体積%以下 | 環境(大気汚染防止) |
*含酸素率 | 1.3質量%以下 | 環境(大気汚染防止) |
ベンゼン | 1体積%以下 | 健康被害防止 |
灯油 | 4体積%以下 | エンジントラブル防止 |
メタノール | 検出されない | エンジントラブル防止 |
*エタノール | 3体積%以下 | エンジントラブル防止 |
実在ガム | 5mg/100ml以下 | エンジントラブル防止 |
色 | オレンジ色 | 灯油との誤使用防止ト |
*E10対応ガソリン車の燃料として用いるガソリンを販売又は消費しようとする場合、その規格値はそれぞれ以下のとおりとする。
含酸素率:3.7質量%以下
エタノール:10体積%以下
項目 | 満たすべき基準 | 分類 |
---|---|---|
硫黄分 | 0.001質量%以下 | 環境(大気汚染防止) |
セタン指数 | 45以上 | 環境(大気汚染防止) |
蒸留性状 (90%留出温度) | 360度以下 | 環境(大気汚染防止) |
トリグリセリド | 0.01質量%以下 | エンジントラブル防止 |
脂肪酸メチルエステル | 0.1質量%以下 | エンジントラブル防止 |
5質量%以下(*) | ||
*メタノール | 0.01質量%以下 | エンジントラブル防止 |
*酸価 | 0.13mgKOH/g以下 | エンジントラブル防止 |
*ぎ酸、酢酸及びプロピオン酸の合計 | 0.003質量%以下 | エンジントラブル防止 |
*酸化安定度(注) | 65分以上 | エンジントラブル防止 |
脂肪酸メチルエステルが0.1質量%を超え、5質量%以下の場合は、「*」の項目も満たす必要がある。
注)当分の間、酸価の増加の測定方法において測定した数値が0.12mgKOH/g以下である軽油は、酸化安定度の基準を満たすものとみなす。
項目 | 満たすべき基準 | 分類 |
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硫黄分 | 0.008質量%以下 | 環境(大気汚染防止) |
引火点 | 40度以上 | 消費者安全の確保 |
セーボルト色 | +25以上 | ガソリンとの誤使用防止 |
項目 | 満たすべき基準 | 分類 |
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硫黄分 | 4.5質量%以下 | 環境(大気汚染防止) |
無機酸 | 検出されない | 動力トラブル防止 |
品質の低い石油燃料は不純物を多く含み、煙や刺激臭、燃えかすが多く発生します。そのため、環境汚染や設備の故障といったトラブルに注意が必要です。たとえば船舶に発火力の弱い燃料を使用した場合、ボイラー内に不純物が蓄積し、修理が必要になってしまうことも考えられます。